「自己破産」に関するQ&A
自己破産をすると破産者名簿に掲載されますか?官報への掲載との違いは?
1 自己破産による名前の掲載に不安がある方へ
「自己破産をすると破産者名簿・破産者リストなどというものに掲載されて、自己破産をしたことが周囲に知られてしまう」と聞いたことがある方もいらっしゃるかと思います。
借金を支払いきれなくなり自己破産を検討していらっしゃる方の中には、この噂を恐れるあまり、自己破産を躊躇してしまっている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし実際のところ、破産者名簿を恐れる必要はほとんどありません。
誤解されやすいのですが、自己破産を行った人が全て破産者名簿に掲載されるわけではないのです。
2 自己破産手続の概要
まずは、破産者名簿について理解するために、自己破産についての基本的なところをご説明します。
自己破産手続は、公租公課などの一部を除いた借金を全て免除してもらうことができる債務整理手続きです。
その代わりに、マイホームなど、債務者が所有している価値ある財産は処分・換価され、債権者に配当されます。
「借金が0になること」を「免責」と言いますが、免責されるには、裁判所に免責許可決定をしてもらわなければなりません。
そのため債務者は、まず裁判所に自己破産手続の申立てをする必要があります。
自己破産手続の種類には、破産管財人が選任される管財事件と、選任されない同時廃止があり、債務者の個々の事情によって、裁判所により振り分けられます。
この振り分けをするにあたっての一つの判断材料として、債務者に免責不許可事由(債務者を免責させるには不適切な事情)があるかどうかというものがあります。
管財事件では、破産管財人が、債務者の免責不許可事由がどういうものかを調査します。
しかし、免責不許可事由があっても、絶対に免責されないというわけではありません。
裁量免責制度と言って、裁判所が総合的な判断の下で免責を認めているため、よほど悪質な場合を除き、多くのケースにおいて免責されています。
3 破産者名簿とは
⑴ 破産者名簿に載るケース
破産者名簿は、本籍地の市町村に保存してある名簿で、破産者であることが掲載されます。
誤解されやすいのですが、自己破産を行った人が全て破産者名簿に掲載されるわけではありません。
確かにかつては、自己破産手続開始により、裁判所から破産者の本籍地である市区町村の役所へ通知がされ、破産者名簿に破産者の氏名や住所が記録されることになっていました。
その頃は、免責が確定し「破産者」ではなくなると、名簿の記録は抹消されるという流れでした。
しかし、平成17年の破産法改正で、破産者名簿に掲載がされるのは、免責許可決定がされなかった場合など、ごく例外的なときに限られることになりました。
そして、先ほど軽く説明したとおり、実務上は、免責不許可事由があったとしても、多くの場合は裁量免責により免責許可決定がされています。
ですから、多くの人は、自己破産をしても破産者名簿に掲載されることすらないのです。
なお、戸籍や住民票も自治体に管理されているものですが、こちらは破産者名簿とは全く関係ありません。
戸籍や住民票に自己破産に関する情報が記載されることは一切ありませんので、ご安心ください。
⑵ 破産者名簿の効果
では、ほとんどのケースで掲載されないのに、破産者名簿というものがなぜ存在するのでしょうか。
それは、自己破産手続のデメリットの一つである資格制限に関わります。
自己破産をすると、司法書士・税理士などの士業や、宅地建物取引業、生命保険募集人、警備員など、一部の職業について免責許可決定の確定まで従事することができなくなります。
免責前の破産者が働くことが制限されている資格に登録の申込みなどをするときには、破産者名簿に登録されていないことの証明書の提出が求められます。
つまり、破産者名簿は、資格制限される職業で働く場合に必要となる証明書の元となっているわけです。
⑶ 破産者名簿と官報の違い
破産者名簿の他に、自己破産をすると掲載されるものとして「官報」があります。
官報は国が発行する機関紙で、誰でも閲覧することができますが、実際に官報を確認している人というのは多くないと思われます。
これに対して、破産者名簿は自治体が管理しており、上記の通り非常に限られた場合にのみ利用される書類です。
そのため、官報よりもはるかに目にする人は限られています。
4 破産者名簿への掲載を削除する方法
とは言え、もし自己破産手続きを行ったものの、免責許可決定がされず破産者名簿に掲載されてしまった場合、どのような対応をすればいいのでしょうか。
破産者名簿への掲載を削除するには、端的に言えば「破産者」でなくなればよいのです。
破産者でなくなるには、「復権」を得ることが必要となります。
復権は、基本的には免責許可決定の確定によりますが、他にも復権するための方法があります。
すなわち、免責されず、破産者名簿に載ってしまっても、以下の方法で復権を得ることで破産者でなくなり、破産者名簿からも削除されるのです。
⑴ 裁判所に個人再生を認めてもらう
個人再生手続は、自己破産手続と同様、裁判所に申立てて債務を整理する手続です。
もっとも、自己破産手続と異なり借金の返済負担は残ります。
おおよその目安としては、借金総額の5分の1〜10分の1を原則3年(最長5年)で支払うことになります。
その返済計画を裁判所に認めてもらえると、復権することができます。
⑵ 借金を無くして裁判所に資格解除を申し立てる
免除されなかった借金を返済したうえで、裁判所に申立をするという方法です。
とはいえ、借金を支払えずに自己破産を申し立てた人にとって、この対応は一般的には困難かと思います。
親族から援助してもらえたなど、幸運に恵まれた場合にのみ用いることとなる方法といえます。
⑶ 開始決定後10年が経過する
時間の経過により、何もせずとも復権することも出来ます。
具体的には、自己破産手続の開始決定から詐欺破産罪の有罪確定判決を受けることなく10年が経過することが必要です。
5 自己破産をお考えの方は当法人へ
結論から言えば、自己破産をするにあたって、ほとんどの場合には破産者名簿への掲載を恐れる必要はありません。
そもそも破産者名簿に掲載されることは滅多にありませんし、掲載されたとしても不利益が生じる場面は限定的だからです。
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